まあくのカンゲキノート VOL.26(雑誌「舞Land」より)
「品性無きものの空洞」
初めてのトルコの旅は、危険情報発令中と、言葉の難しさにひよって、とあるツアーにもぐりこんだのが間違いのもと。それでも命からがらツアーから抜けての後半3日間は、トルコの人々の親切にカンゲキの連続だった。この旅の詳しくはトルコ音楽の紹介も含めてまた本誌で書かせていただく予定、お楽しみに。
トルコから帰って早々の2月24日、バレエダンサーの西島千博さんのお誘いでチケット入手困難の噂の「ジル」(銀河劇場)へ。、西やんからは、男版「ジゼル」、と説明受けてたが、プラス、ロッキーホラーショー的雰囲気もあり。共演の元宝塚男役トップスター湖月わたるさんのりりしさと西やんの(いい意味の)女性っぽさあいまって、中々に面白い舞台だった。上演時間80分で収めてたのもカンゲキ!
「ジル」が昼公演だったので、そのまま夕暮れの武道館へ直行。「ワールドスーパーシリーズアジアオープンプロフェッショナルダンス選手権大会」は丁度、セミグランドファイナル前のよきところ。それにしても久しぶりの武道館ダンスフロア状況は、浦島太郎的感興に浸ってしまう。だってだって、「スパージャパンカップ」というセグエの選手権大会をTV東京でオンエアしてた頃があった。もう20年以上前から12〜3年前までの10年間ほど、TVの構成のみならず、武道館での構成演出もまあくが担当していた。はあー、懐かしのダンス業界。本誌編集長が取って下さった来賓席から知った顔を伺えば、嬉しくも伊藤金四郎先生にばったり。聞けば先生が大会委員長で、この組織の会長が中川勲先生だとか。
ダンス界が幾つもの団体に分かれた、という話しは聞いてたが、まあく的には別世界。俯瞰で大会見れば、世界のトップが集うダンスという競技に、改めてダンスの美しさ、楽しさを再発見することが出来る。コスチュームのセンスも格段に良くなっていて、それらを見てるだけでも楽しい。ただ、残念なのは、世界選手権と銘打っていても、勝者への外部マスコミ取材はほとんどなく、翌日のスポーツ紙にさえその“美しき快挙”が載ることはない。それは何故か。もっと大きな器でダンス界全体の外部へのアプローチや向上を考えると、自ずから答えは見つかるはずだ。男女がペアでやるのが基本のダンス、基本からコミニュケーション、人と人、なのだ。ダンスのステイタスに最も大切なのは、技術や衣装や、まして賞金金額ではなく、やる人の、関わる人の、品性である、と。この考えは、まあくがダンス番組やってた頃と全く変わっていない。
翌日は京谷弘司クァルテートのタンゴを聴きに、六本木のスイートベイジルへ。彼らはまあくが企画制作演出している、アーティストコラボレーションステージ「タンゴモデルナ」のVol.6と7に出演もしていただいてる。恐るべしテクニックと品性のある演奏で、モデルナの京谷クァルテートファンも多い。それにしてもヴァイオリンの喜多直毅さん、凄すぎ。で、カンゲキ。
タンゴと言えば、トルコへ発つ前日観たタンゴミュージカルと銘打った「タンゲーラ」(オーチャードホール)これってミュージカル、なんて言わなければいいのに。どちらかと言えば、バレエ形式、ストーリー解説読み込みよろしくバージョンで、いい。照明暗すぎ、この企画ではオーチャード広すぎ、とか色んなNG差し引いても、ダンスはいいし、何ていっても歌の(いい意味、アルゼンチンの肝っ玉かあさん風)おばさんが最高。こちらも何だかんだいっても、とても品性のある舞台だった。
4日、赤坂TBSの新開発エリア、3月20日にオープンする“赤坂サカス”に一足早く施設説明内覧会に行った。目と鼻の先に六本木ミッドタウン、その先に六本木ヒルズ、次々とオープンする、巨大施設を呆然と見上げるのは、品格声高に叫ぶだけで品性忘れてしまった自給率40%を切る日本の国自身、なのかもしれない。
- 2008.03.13 Thursday
- カンゲキノート(舞ランド誌連載より)
- 14:57
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