中国の復興は美しい言葉から(「ビューティービジネス」誌より)

中国の復興は美しい言葉から 

成都から、車で無整備の山道5時間かかって臥竜のパンダ研究所を尋ねた。去年2月のことだ。山深い四川の清らかな空気の中、100頭を超えるパンダたちが伸び伸び暮らしていた。これも縁と、生後6ヶ月のパンダの名付け親になった。一緒に行った長女の名、愛(いとし)と、中国との友好を込めて“愛華”(アイホァ)と、名付けた。  先頃6月のはじめ、パンダ研究所からメールが来た。愛華は無事で、今は元気にしている。大変な被害だったが、やっと少し落ち着いた、というような内容だった。笹を食べる愛華と、倒壊したパンダ舎の写真も添えられていた。  確かに世の中的には“パンダどころじゃない”状況だろうが、まあく的には、あえて顰蹙かってもパンダを通して、中国に援助をしたい。  以前阪神大震災の折、大手化粧品会社からのリップクリームの配給に、女性のみならず男性たちも喜んだ、という話を聞いた。  直接的な食料の援助は確かに大事だが、リップにしても化粧水にしても、心を潤す化粧品の援助は、食料品と同じくらい大切なものだ、と実感した。  「人はパンのみに生きるにあらず」聖書のこの言葉は、真理だ。だから中国の人々の心の友、パンダを守ることは“それどころじゃない”こともない、のだ。  岩手、宮城地震で被災された皆さんにも、そんな心使いこそ必要だろう。

 大地震直前の国家主席の訪日といい、その前の毒入り餃子問題など、経済発展以上に何かと話題の中国。  少し前には、古(いにしえ)の北京を舞台にした「トゥーランドット」が赤坂で上演された。TBSアクトシアターが新装しての、局をあげてスポットうちまくり公演だったから、皆さんもよく覚えておいでだろう。あのプッチーニのオペラにもとづいたストーリーだが、音楽は勿論別モノ。  “ミュージカル”なのに、唄えない人気者が、お金かけまくった舞台で、中身の全くない“スペクタクル”を“繰り広げて”いた。  今、思いだそうとしても、楽曲のワンフレーズすら思い浮かばない。  が、唯一感動したワンシーンがあった。主演のトゥーランドット姫を、鳴り物入りでTBSが中国から呼んだ、アーメイという歌手が演じていた。感動は、彼女のその評判の歌声ではなく、中国名前の家臣の名を、次々と呼び上げるシーンだった。その妙なる発音の優雅さ美しさ。  それまでお姫様言葉のカタコト日本語セリフ(深刻な場面でも笑いさえ誘った)をしゃべっていた彼女とはうって変わった、威厳と高貴に満ち溢れた一瞬だった。  まあくが演出なら、絶対彼女だけは全編中国語で通させただろう。有名で単純なストーリーでもあるのだし。  それにつけても中国語の発音の美しさ、多分広東語ではなく、北京語だ。臥竜に行った時も、上海や成都の空港で響き渡る女性の案内の声に、何度立ち止って、聞き入ったことか。  海外の旅行先で、よく中国人と関西人を間違えてしまうことがあった。特におばさんたちの、“しゃべりまくっている”、様子がそっくりなのだ。それまで、そんなうるさい感じの中国語しかイメージなかったが、実際中国に行って、ゆったりとした女性の声で聴く中国語は、なんて優雅で綺麗なんだろう、と感心感動した。  舞台では、アーメイの呼び上げる名前ひとつひとつが、詩のようだった。  美しい言葉と言えば、この方の日本語の耳触りの心地よさに感心した。    つい先日、東京スカパラダイスオーケストラ(スカパラ)のコンサートに、政治学者の姜尚中先生とご一緒した。うちで企画・制作している「コーセー・アンニュアージュトーク」というトークショーに、先生とスカパラメンバーの出演が決定したからだ。  先生が心底コンサートを楽しんでくださってる様子が嬉しくて、終了後も話しが弾んだ。  テレビで見る先生は、どんな局面に立ってもトーンを変えない冷静な語り口。東大教授という肩書きと、お綺麗な顔立ちも手伝って、ちょっとお堅いイメージだったが、実際話していると、笑顔も多くフランクで、堅苦しさなど微塵もない。もっとも、まあく相手に難しい話も出来ないので、こちら合わせてくださった感はあるがー。 
 それにしても常に冷静な話し方はテレビと同じだが、趣味(何と!大型バイクに興味あり!!詳しくは新書「悩む力」で)の話しになると、そこ(言葉)に暖かさが風のように入ってくる。ソフトな声質、静かで滑らかな話しぶり。まるでフランス語を話すように、日本語を話される。ふと、聞きほれてしまうほどだ。こんなに日本語って綺麗なんだ、と。その上、説得力もある。相手の心にすっーと染み込んでくるような、そう、とんでもなく高い保湿クリームが肌に染み込んでいく、そんな感じ、か。
 近頃の若いこたちの言葉の汚さって、ホント嫌だね、って、いつも娘たちとそんな話をしていたから、先生の政治学と同じくらい、若い人たちに、先生の話し方を広めてってほしい。

 それはそうと、今回の中国大地震に、日本はどれだけ中国国民の気持ち推し量った援助が出来るか。  菊池寛に「恩讐の彼方に」という名作がある。親の仇を討つために追いかけてきた武士と、その仇である男が、人々の安全の為に共に山にトンネルを掘ることになる。何十年も、命さえかけて。そして、やっとの思いで貫通したその時、武士のその男への恨みは消え、二人手をとってその完成に泣いた、という話だ。  これは、九州の耶馬溪に実際にある「青の洞門」をもとに書かれた。  今回の大地震に対する日本の行動は、中国に対する日本の過去の過ちを、“恩讐の彼方”に出来る、一つの機会でもあるのだ。  「パンダなんかいらない」と言い放った石原さんは、その何億万倍もの税金、湯水のごとく使う機会を堂々と与える「オリンピックなんかいらない」と言う声に、聞く耳を持っているのだろうか。聞く耳がないと、到底美しい日本語なんてしゃべれない。

 危険な時期を過ぎると、その地域を1日も早く沢山の人々が訪れることが、1日も早い復興に繋がる、ということを阪神大震災の後、神戸の人々が言っていた。  今はまだ嘆きと哀しみの言葉しか聞こえないだろうが、1日も早く優雅な美しい中国語をこの耳で聞くために、そしてもちろん、臥竜のパンダたちに逢うために、また必ず四川を訪ねよう。

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