まあくのカンゲキノート VOL.32(雑誌「舞Land」より)

「秋の日の・・・」 
 10月になって早や4日。寒いのか暑いのか良くわからない日々が続く。半そでシャツにベスト、短パンにロングブーツ。夜の冷えに備え、半そで毛皮超ミニジャケト手持ち。という、陽気に合わせた、こちらもよくわからない格好で、「CHICAGO」のプレビュウ公演に行った。これまで来日したブロードウェイキャストで何度か観ているが、今回は初めての日本人版だ。  主演コンビの殺人犯ダンサー役は、ロキシーに米倉涼子さん、ヴェルマに和央ようかさん。そしてもう一人の主役、二人を無罪に導くやり手弁護士ビリーに、河村隆一くん。派手デカ女性二人に挟まれた、小柄な少年ビジュアル系隆一くんのビリーの姿って、どうなるんだろう???  あえて“くん”と呼ばせていただくお知り合い関係だけに、一番の心配が隆一くんだった。が、それがどうして、まだプレビュウだけに少し硬い感はあるが、さすがの歌唱だし、意外と隆一くんのビリーになっていた。去年の来日公演で観たビリーは、バックストリートボーイズの元メンバー、ケビン・リチャードソンだった。ビジュアルはぴったりだったが、何だか物足りないビリーだったのを覚えている。ちなみに最高に良く出来てた映画版、のビリーは、リチャード・ギア。ギアは好演だったが、実は監督が最初にオファーしたのは、J・トラボルタ。と思えば、へんに貫禄なんか求めないで、隆一ビリーもアリだったのだ。  舞台は、まだ全般に緊張感のぎくしゃく感が残る、のは仕方ないとして、日本人キャストには一番似合わない、セクシーこれでもか的衣装と振り付けの、ボブ・フォッシーテイストは(どんなに日本の皆さんのスタイルが良くなっていても)どうにも観ていて、イタい感がある。それに、いつも日本のスターシステム舞台を観て思うのだけど、ミュージカルって、やっぱ唄えて何ぼ、でしょう。歌えない方の配役だけは、もうもうやめてほしい。  ブロードウエイ公演で、ウテ・レンパーが演ったヴェルマの登場シーンは今でも語り草だ。粋で官能的でダンデカダンなスタイル、そして抜群の歌唱力。あの前奏がかかると、今でもウテ・レンパーのシルエットしか浮かばない。と、友人が力説していた。  にしても、役者さんたちの頑張りは充分伝わってきたし、和央さんはこの舞台(役)で何かひとつ“突き抜けた感”もあり、だ。これから初日迎え、回数重ねて行くうちに、もっと出来上がって行くのでしょうね。(10月8日より〜11月2日まで。赤坂ACTシアター)

 で、先週は秋の絵画鑑賞が続いた。まずはフェルメール。現存作品は三十数点、の中の7点が今回日本に来た。前回何年か前に上野に見に行った時は確か2点。一挙にフェルメール7作品見られるなんて、これは確かに貴重な機会。  驚いたのは「マルタとマリアの家のキリスト」。フェルメールが宗教画を描いていたんだ。それもあの良く知るフェルメールのタッチとは全然違う。田舎風景描いてる優しい絵のほうのゴヤ風な感じだ。これはイギリスのナショナルギャラリー所蔵であるから、まあくは10年前に見ているはずだが、知らなかった。しばし呆然とみてしまう、へえー、これもフェルメールなんだ。あとは、あのフェルメールの独特のタッチ。ざわめきの静寂、光の陰影がつくる空気感。絵の中の人々の息使いが聞こえてくるようで、思わず額縁の奥を覗き込みたくなる。そこに絵の向こうが現れてくるように感じるのだ。他には、フェルメールが生まれ活動したオランダの街デルフトから輩出した画家たちの、遠近法を駆使した作品群も面白い。(東京都美術館〜12月14日まで) 
 フェルメール流れでもうひとつ。面白企画はうちのご近所恵比寿ガーデンプレイス隣接東京都写真美術館の液晶絵画展。高精細の画面とディスプレイ環境の、大いなる進歩でこそ実現出来た映像で創る絵画。どれも斬新で興味深い。吹雪く「水の森」、腐っていく「静物」、振り返る「真珠の首飾りの少女」。そう、映画のモチーフにもなった、フェルメールの有名な一枚だ。頭にあざやかなブルーのターバンを巻き、真珠の首飾りの少女がこちらを見ている。これは絵の中の人物に“なりきりアート”を得意とする芸術家、森村泰昌さんの作品。フェルメールの最高傑作と評価される「絵画芸術」の“一室”もまるごと再現されている。(10月13日まで)  そして、先月のはじめ、40年の時を超えた見事な画家の誕生に遭遇した。銀座のシンワアートミュージアムでの個展で、その実力を見せつけたのは小林美智子さん。株式会社コーセーの相談役夫人であり、現社長のお母さまだ。東京芸術大学油絵学科を卒業。画家としての将来を期待されたが、結婚して筆を絶った。社長夫人としての役割も終え、跡継ぎである3人のご子息も育てあげ、近年また40年ぶりに絵筆を持った、のだそうだ。
 彼女のゴージャス経歴もあってのことだろう、何人もの取材陣が来ていた。有閑セレブの趣味をはるかに超えた、その絵の迫力と魅力に圧倒されたことだろう。迸るエネルギーが額縁から溢れてくるようだ。エゴン・シーレ彷彿とさせる裸婦の素描のタッチもモダンだ。近年挑戦したという抽象画も力強く、こちらの想像力をかきたてる。「見た人がこうだと感じてくれたらいい」だから絵にタイトルはつけない、とか。感覚派の美智子さんらしい言葉だ。  美智子さんの40年は、絵にとってけっして失われた40年ではなく、その月日があったからこそ、今またこんな素晴らしい絵が描けるのではないだろうか。  幾つになっても夢は叶うのだ。  小さい頃からの夢を叶えたもう一人。「吉村作治の早大エジプト発掘40年展」(サンシャインシティ文化会館古代オリエント博物館)こちらの40年は、エジプトを振り続けた年月。掘り出された古の数々は、雄弁に当時の生活を語る。まさにロマンだ。2000年経ても青いミイラマスクは、本当不思議なほどに美しいブルーだった。

吉村先生おめでとうございます。

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